雪の庭で



小さな男の子の手を引いて歩いていた。
雪の庭はまだ少女だったメイコにも充分に広くて、道をなくせば凍え死んでしまうのではないかと言うほどに見知らぬ世界だった。そんなことは露とも思わないらしいカイトは無邪気に、手袋の手に雪を持ち、にこにことメイコに見せてきたりする。
「お姉ちゃん、見て。すごいよ」
そうだね、と笑ってメイコはカイトの頭に乗った雪を払った。青い髪はさらさらと振れる。ふくふくとした少年の笑顔が、メイコの胸を温めた。
音もなく雪は降る。白い空から舞い散る軽さに、花と喩えられるわけを知る。
「きれいだね、お姉ちゃん」
小さな男の子は頬を赤らめて笑う。メイコは手袋を取り、その頬に触れた。もうずいぶん冷たくなっている。
「うん……でも、そろそろ戻ろう」
青い眸は少し、名残惜しそうに庭を振り返った。それでも、ね、と促せばカイトは素直に頷く。
メイコは幼い手を取り、再び歩きだした。
この美しい色が人の命を奪うこともあると、無垢な眸はまだ知る必要はない。



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