今日はかくれおにね、と小さな弟が言ったからメイコは彼を探して無人の館を歩き回っていた。 一つ、また一つとドアを開けては覗き込み、置き去りの家具の陰に夏空色の髪の揺れるのを、裳裾の膨らみがちらと窺うのを、期待をかけて見回した。まるで捨て置かれたようなその館は離れであり、母屋に比べれば比較とするのがおかしいほど小さい。それでも十絡みの少女には広く大きく、一人の少年を見付ける作業は、充分に探検だった。 軋む音を聞きながら階段を登る。廊下を見渡しても、もちろん少年の姿はない。廊下に立っていたのでは″隠れた″ことになりはしない。メイコは少し悩んで、奥まった一室へと足を向けた。幼い手に余るノブを掴んで引くと、ドアは重たげに、ゆっくりと開かれた。 部屋には午後の日が静かに降りている。鏡台、ドレッサーやクローゼット。女性の部屋であったろうと思わせる。埃が降り積もり、閉ざされて充満した黴臭さに鼻の曲がる思いをする部屋の多い中で、その部屋は不思議と整っているように見られた。使われている形跡のないものさみしさはあったが、荒れているとは思えない。メイコは息を詰め、部屋へと足を踏み入れた。 鏡台の陰、少し開いたクローゼットの中や、少年の隠れられる場所はいくらでもあったはずだが、それらは目に入らなかった。メイコは足を忍ばせるようにゆっくりと、息を詰めて奥へと歩いていく。その部屋は奥に隣室へとつながるドアが設けられているのだ。それを。 メイコは知っていた。 胸は早鐘を打つ。掴んだノブを捻り、引くと、ドアは緩やかな重みを手に残しながら開かれた。 |